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ミュンヘンより

日本貿易振興機構(ジェトロ)ミュンヘン事務所 所長 新井 俊三

日本貿易振興機構(ジェトロ)ミュンヘン事務所 所長 新井 俊三ジェトロ・ミュンヘン事務所所長の新井です。私は1997年5月から2000年6月までの3年2ヶ月、同じくジェトロの鹿児島貿易情報センターで所長をしており、皆様には何かとお世話になりました。今でも桜島や焼酎がなつかしく思い出されます。

<気候変動?>
さて、今年の日本は冷夏のようですが、こちら欧州は久々の、あるいは場所によっては観測史上最も熱い夏を迎えております。日本でも報道されているかもしれませんが、ポルトガル、スペイン、イタリアやフランスなどでは山火事があったり、あるいは暑さと水不足のせいか、夏なのに一部樹木の葉が落ちてしまい、道路に枯葉がたまり、そこだけ見ると秋のような光景も出現しています。水不足は農作物にも影響を与えており,野菜、果物の不足、値上がりが心配されていますし、それは一面では農家の収入源という問題でもあります。
日本ですと、暑い夏はクーラーの売れ行きがよかったり、ビールやジュースあるいは夏物衣料がよく売れるということで、景気にプラスに働くようですが、ドイツではどうもそうではないようです。もともと夏は、2~3週間の休暇を取る人が多く、経済活動も不活発になってしまうのが常ですが、異常気象に見舞われたとはいえ、特にあわててクーラーを買うこともなさそうで、これによりどこかが潤うということもあまりありません。暑さゆえ儲かっているのは、アイスクリーム屋さんとビール会社、それとビアガーデンぐらいなものです。それとすぐには結果はわからないのですが、これだけ暑いとワインのできもいいはずで、2003年もののワインがどのような味になるか、今から楽しみです。
こちらは冬の寒さが厳しいせいか、暖房はしっかりしていますが、冷房については建物が古ければ事務所でも設置されてないところも多く、まして家庭にはほとんどありません。少し暑いぐらいだと、ベランダですごしたり、あるいはビアガーデンに出かけてしまったりで、家にクーラーをつけようなどとは思わないのでしょう。
冬の寒さの厳しさと太陽がすくないことから、少しでも暖かく、またお日様がでると、ドイツ人は散歩をしたり、日光浴をしますが、レストランでも庭や歩道にイスをならべ、客は外で食事をするようになります。当地の関係者の話では、夏は日本レストランにとって儲からない季節のようで、もともとバカンスで地元の人はどこか保養地に出かけているし、残っている人も天気がよければビアガーデンに行ってしまい、レストランの室内で食事をしようなどというひとは例外なのだそうです。
今年は異常な暑さだったのですが、昨年のドイツの夏は異常な雨、洪水に見舞われました。これも100年ぶりとか、歴史始まって以来とかでした。洪水の被害にあったのは、チェコから旧東ドイツを通って、ハンブルグから北海に注ぐエルベ川流域と、こちらは被害が少なかったのですが、ドナウ川沿いの一部でした。エルベ川やドナウ川のような大河になると、豪雨で水量が増えても、下流にまで影響が出るのは時間がかかります。きょうはこのあたりの堤防が決壊したから、明日は下流のあの町が危ない、というふうにテレビでも毎日報道されておりました。
ミュンヘンに北側を流れるドナウ川も水量が増し、流域のレーゲンスブルグやパッサウという町も日本でいえば軒上浸水のような被害がでました。たまたま今年の7月にパッサウに行く機会がありました。この町はドナウ川とイン川、それとイルツ川という3つの川が合流する町としても有名なのですが、ドナウ川沿いの家の壁には過去の歴史的な洪水の水位が記されておりました。
大洪水と猛暑と2年続いて異常気象に見舞われ、果たして来年は何が起こるのであろうかと心配です。

<ドイツ人にも人気の町、ミュンヘン>
私が住んで、仕事をしている町、ミュンヘンはドイツ南東部の町です。ドイツは連邦制をとっており、東西ドイツ統一後は16の州から構成されておりますが、その1つの州、バイエルン州の州都でもあります。人口が約130万人。
日本ですと、「ミュンヘン、札幌、ミルウォーキー」というビール会社のコマーシャルにもあったようにビールの町として、あるいは2002年日本・韓国のワールドカップ・サッカー大会で活躍したキーパー、オリバー・カーンが所属するサッカー・チーム、バイエルン・ミュンヘンの所在地として知られているのかもしれません。
ここは産業でみると、電機メーカー、ジーメンスあるいは自動車メーカーBMWの本社があり、アリアンツという大きな保険会社もあります。近年は先端技術産業にも力を入れており、ITの町、バイオの町としても有力になってきました。ドイツ全体の失業率が約10%という中、バイエルン州は6%台であり、経済も好調です。
南に位置することから、日照時間も多く、少し南に行けばアルプスがあるため、夏は登山に冬はスキーにとレジャーにも恵まれております。市内には2つのオペラ劇場やコンサートホールもあり、美術館、博物館も多く、文化都市でもあります。こうしたミュンヘンのよさに引かれて、ミュンヘンで仕事につきたい、大学に通いたいというドイツ人も多く、その結果でしょうか、人が集まりすぎて住宅不足になっており、家賃も他のドイツの大都会と比較すると高くなっています。
ミュンヘンはまた観光の町でもあります。バイエルン州がまだ小さな王国であったころ、城作りに異常な執念を燃やしたルードヴィッヒ2世という王様がいまして、この王様が残してくれた城のお陰で、日本をはじめ外国から大勢の観光客がバイエルン州を訪れています。

カール門

<オクトーバー・フェスト>
ビールの町、ミュンヘンを代表する催し物といえばやはりビール祭り「オクトーバーフェスト」です。文字どおり訳すと10月祭りなのですが、9月下旬から約2週間開催されます。元はといえば、1810年当時の皇太子ルードヴィッヒ1世とテレ-ゼ姫との成婚を祝ったのが始まりといわれ、今年で170回目を迎えます。毎年国内ばかりでなく、世界中からビール・ファンが押し寄せるため、ホテルは取りにくく、値段も通常の倍ぐらいに跳ね上がります。
会場となるミュンヘン市内のテレージエンヴィーゼ広場には、5000人から1万人を収容できるビール会社特設のビヤホールが10以上建設され、そこが連日満員となります。通常ビヤホール内で売られているビールは1リットル入りで、量はありますが、そこは会場の熱気でなんとなく飲めてしまうものです。ビヤホールのまわりには、ジェットコースターや観覧車、お化け屋敷も登場し、子供も楽しめる遊園地ともなります。
初日となる土曜日にはビール樽を積んだ馬車の行列があり、会場に到着したビール樽に市長さんが栓をつける儀式があります。翌日の日曜日には民族衣装をまとった様々な団体の行列も行なわれます。
昨年の記録を見ると、入場者数が延べ約590万人、飲んだビールが約5760万リッター、食べた鶏約45万羽などとなっております。

<蒸留酒の人気は世界的>
ビールの国ドイツでは、今年の暑さで消費量は伸びていて、ビール会社は喜んでいるのですが、長期的に見てみるとビールの消費量は減少傾向にあります。ドイツのビール業界の問題は、メーカーの数が多く、それだけ個々の企業の経営規模が小さいということです。日本の地酒メーカーと似たようなところがあります。ドイツには1200ビール会社があり、5000のブランドがあるといわれています。ビールの味は新鮮さが勝負ですから、いわゆる地ビールのような小型の装置で作り、それを隣接のレストランで提供することで評価されるとか、あるいは郷土愛に訴えて地元のビールを飲んでもらうということもありますが、国際化が進む中、オランダやベルギーの大手ビール・メーカーに買収されていくケースも増えています。
日本では何度目かの焼酎ブームであると聞いております。世界的に見てもどうも蒸留酒の消費が伸びているようです。焼酎も蒸留酒なのでしょうが、蒸留酒といえばウイスキーやブランディー、ウォッカ、テキーラなどそれぞれの地域に独特の蒸留酒があります。ドイツにも一般にはシュナップスとよばれる蒸留酒があり、原料はとうもろこしであったり、穀物であったりしますが、さくらんぼや木いちご、あんずなども使っており、これらは酒として飲んでも原料の風味があります。
ドイツにおける蒸留酒の人気は、カクテルのベースとして使われてることからくるようで、何かと混ぜることによりアルコール濃度を薄くできることも魅力のようで、この点鹿児島の焼酎の飲み方とは違うようです。

歩行者天国

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<ジェトロ ミュンヘン>
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