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モスクワより

日本貿易振興機構(ジェトロ)モスクワ出張所 代表 村上 久

鹿児島の皆さま、дравствуйте!(ズドラーストヴィチェ:「お早うございます/今日は/今晩は」すべてに使える便利なロシア語の挨拶の言葉です。)
ジェトロ・モスクワ出張所代表の村上と申します。私は1998年11月から2001年8月までの約3年間、ジェトロの鹿児島貿易情報センターに勤務しており、皆さまには大変お世話になりました。
爆弾事件、大型レジャー施設の崩落事故など、暗い話題ばかりのロシアですが、拡大する景気は衰える気配を見せません。最近では、新たなビジネスチャンスを探しに自分の目でロシアを見に来たという出張者の方々が増えていますが、ほとんどの方が想像よりも遥かに良かったと感想を述べられています。

<キャビアはイクラ?>
さて、皆さまはロシアでの生活についてどのような印象をお持ちでしょうか? パンを買うための行列は大げさにしても、あまり豊富に商品が流通していないとお考えではないでしょうか。

モスクワ市街
モスクワ市街

恥ずかしながら私も赴任する前までは、食料にも事欠く生活を想像していました。しかし、実際にはスーパーやブティックなどのお店が建ち並び、ありとあらゆるものを手にすることが出来ます。例えば、スーパーの品揃えは、生鮮食料品売り場が少々物足りないタイヨーと言えば、ご想像頂けるでしょうか。さすがに生鮮は日本には適いませんが、南方のコーカサスや中央アジアを含む旧ソ連諸国から届く食料品はとても豊富です。トマト、キュウリ、ジャガイモはもとより、お米、長ネギ、ほうれん草、果ては各種ハーブにキノコ類、夏には驚くほど安く美味しいスイカやメロンも出回ります。
また、川魚や冷凍もの、燻製が中心ですが、ロシア人もしっかりと魚を食べます(美味しい魚は日本に送られてしまうとのこと)。お酒のおつまみにロシア製のさきイカもありますが、これは極東の漁師が日本から持ち帰ったのが始まりとされています。飽きるほど食べることができると想像していたイクラは、残念ながら新鮮なものは日本に輸出されてしまい、モスクワに届くのは大抵がビン詰め、カン詰めです。ご存知かもしれませんが、イクラは「魚卵」を意味するロシア語。いわゆる日本語のイクラは「赤いイクラ」、同じくキャビアは「黒いイクラ」と呼ばれています。モスクワ市内で100グラム強のビン詰めの小売値が、それぞれ約600円(イクラ)、約10,000円(キャビア)とこちらでも高嶺の花です。

<ロシア人は日本好き?>
モスクワでは、空前の日本食、寿司ブームと言われています。一説には、日本食レストランだけで200件以上が開業し、メニューに寿司があるレストラン、バーは数え切れないほどです。恰幅の良いロシア人が器用に箸を使いこなす様は、今では当たり前に見られる光景です。値段はピンからキリまでで、デフレ傾向の日本より割高です。味はご想像にお任せしますが、日本人の板前さんのいないレストラン(これがほとんど)では、どうしてもロシア風になってしまうようです。また、日本食レストラン用の和風内外装品、小物、回転寿司の設備、さらには寿司ロボットに至るまで、様々な引合いもあります。
ブームの背景としては、ロシア人が新しいもの好きであること、健康志向の高まり、お洒落なイメージ、元来からの米食文化等々が挙げられますが、根底には「日本に対する非常に良い印象」があるのではないかと思います。ソ連時代には、工作機械を始めとして各種日本製品が輸入され、品質が良く耐久性も高いことから現在でも大事に使用している光景を目にします。またソ連崩壊以降は、自動車や家電製品など身近な商品が多く輸入されていることもあり、一般消費者にとって日本のモノは良いというイメージが確立されているようです。
これだけ流行している寿司ですが、そのネタのほとんどがヨーロッパ、そしてアメリカから輸入されてきます。運良くハマチを口にする機会に恵まれた時などは、ニューヨーク経由で遠路遥々モスクワまで辿り着いたのではないかと鹿児島に思いを馳せたりします。日本からモスクワまで直行便で8時間程度ですから、本当はニューヨークやロンドンよりも近いのです。

<ロシア人も緑茶を飲む?>
ロシア人は実に良くお茶を飲みます。ある統計では、一人当たりの茶葉の消費量が、アイルランドに次いで世界で2番目に多いそうです。(イギリスは嗜好が多様化し近年減少。)アイルランドの人口がおよそ400万人、対するロシアの人口が同じく1億4,500万人ですから、ロシアの消費量は相当なものです。主に紅茶が中心ですが、砂糖をたっぷりと入れて、日本の緑茶と同じように一日に何度も飲みます。紅茶にジャムを入れるロシアンティーという飲み方を耳にされた方もいらっしゃると思いますが、ロシアのメニューにはありません。たまに、ジャムあるいはハチミツを小さなスプーンですくい取って、舐めながら飲むことがありますが、大抵は砂糖にミルク、またはレモンを入れます。
さて、ロシア人は主に紅茶を飲むと書きましたが、緑茶を飲む習慣もあります。ソ連時代には、緑茶はコーカサス地方のグルジアで盛んに栽培されていましたし、現在も中国、スリランカ、ベトナムなどから年間6,500トンあまり輸入しています。(2002年度)

ロシア初の日本茶専門店
ロシア初の日本茶専門店

ロシアでは、レストランなどの飲み物はすべて有料であり、日本食レストランも例外ではありません。当然ながら、緑茶を中心に提供しているのですが、たとえ日本茶を謳っていてもジャスミン入りであったり、レモン入りであったりと、日本人には理解できないものばかりです。これらが100ルーブル(およそ400円)前後で売られているのですから驚きです。そして日本食レストランだけでなく、新規開店が相次ぐカフェにおいても、同様の値段で緑茶が販売されています。
そこでジェトロモスクワでは、美味しい日本茶をモスクワの人々にも知ってもらおうと、静岡県と共同で日本茶のプロモーションを実施しました。昨年は食品関連の見本市に出展したほか、プレゼンテーションを開催したり、企業訪問などを通じてPRを行いましたが、「今まで飲んだ事がない爽やかな味」と概ね好評です。見本市出展や企業訪問などを通じた引合いも寄せられており、今後、具体的なビジネスに結びつくことも期待されます。鹿児島茶のファンである私としては、鹿児島のお茶をモスクワで楽しめる日を心待ちにしています。

最後に、ロシアの景気の良さを表すアネクドート(皮肉を含んだロシア独特の小咄)とロシア関連ビジネスに役立つウェブサイトをご紹介します。

【アネクドート】
◎お金は捨てるほどある・・・
(日の出の勢いのニューリッチが、メルセデス・ベンツの最高級モデルを買いに来た。)
ディーラー :「失礼ですが、3日前に同じモデルをお買い上げになったばかりではありませんか。」
ニューリッチ:「そうなんだ。しかし、灰皿が一杯になってしまったから・・・」 

【ロシア関連ビジネスお役立ちウェブサイト】
<経済・ビジネス>
・ジェトロ「~知られざる振興市場~ロシア・中央アジア・コーカサス」
http://www.jetro.go.jp/se/j/russia/
・ジェトロ「海外情報ファイル」
http://www.jetro.go.jp/jetro-file/
・ジェトロ「海外簡易情報照会・委託調査・外国企業信用調査」
http://www.jetro.go.jp/se/j/jousa/keizai04.html
・経済産業省「対外経済政策総合サイト・ロシア」
http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/rus_nis/russia/index.html
・北海道庁国際課ロシア室「ロシアビジネス情報館」
http://www.pref.hokkaido.jp/soumu/sm-tksai/russia/r-spro/database/rbdb/
・社団法人ロシア東欧貿易会
http://www.rotobo.or.jp
・米国商務省NISビジネス情報(英語)
http://www.bisnis.doc.gov

<治安・旅行>
・在ロシア日本大使館「モスクワ安全滞在マニュアル」
http://www.ru.emb-japan.go.jp/japan/anzen/anzen.html
・エコノミスト「シティーガイド・モスクワ」(英語)
http://www.economist.com/cities/citiesmain.cfm?city_id=MCW

<マスコミ>
・モスクワ・タイムズ紙(英語)
http://www.themoscowtimes.com
・イタル・タス通信(ロシア語・英語)
http://www.itar-tass.com
・ラジオ・フリー・ヨーロッパ・ラジオリバティー(英語)
http://www.rferl.org

村上氏へのご質問等は下記までご連絡ください。

【ジェトロ モスクワ】
Hotel “Slavjanskaya”, South wing, Entresol floor, Berezhkovskaya Nab.2, Moscow, 121059, Russian Federation
TEL:+7(095)-941-8866/ FAX:+7(095)941-8869/ E-mail:murakami@jetro.ru

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