当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!
その34鹿児島県農水産品輸出について(1)
政府は外国からの農水産物の輸出攻勢による「守り」一辺倒から、日本の農水産物の輸出へと「攻め」に力を入れてきた。そこで今回は鹿児島県農水産品の輸出について考えてみたい。
筆者の記憶による過去輸出実績のある鹿児島県農林水産品は、梨、生卵、ネギ、ハマチ、カンパチ、ブリ、お茶、水産練り商品、焼酎、梅酒、竹(釣竿、孟宗竹)、木材、軽石、有機肥料などである。それらの中には円高による価格上昇や他国との競争に破れたり、航空路線の廃止と共に消え現在は輸出されていない商品もある。また実績は無くとも可能性を秘めた商品、現在輸出されているが特定の国だけに留まり可能性を残す国に今だ紹介されていない商品もある。
一方欧米では健康食としての日本食に対する評価の高まり、アジアでは富裕層の食材に対する「安全・安心」へのこだわり、それらが新たな市場として形成・拡大しつつある。過去の実績、現在の流れを踏まえ如何にしてそれを形にするか。
まずは何を何処の国に輸出するかを決めて行動に移すわけですが、農水産物の輸出は、鮮度保持の面で飛行機或いは低温輸送コンテナ使用となる。鹿児島にとっての弱点は、直行航空便がソウルと上海のみである為に生鮮品の輸出は韓国と中国に限られる。もちろん両空港を経由しての他国、或いは国内の福岡・関西空港使用による輸出が可能である。しかし鹿児島だけにしか生産できない物であれば別だが、物流コストの上昇と鮮度で空港隣接県の同等産品に負けてしまう。
上海、ソウル以外への輸出となると船による冷凍・低温コンテナ使用になる。冷凍保存の商品であれば問題ないが、冷凍では品質に問題のある商品は輸送時の温度・時間設定の研究が必要になる。例えば鳥取の梨は4度Cでの長期保存で品質に問題ない事が証明され船便で輸出されている。果実類は鳥取の梨をヒントに解決策が見つかれば可能性が見えてくる。
野菜類の輸出については、現在日本に韓国・中国を除く国から船便で輸入されている野菜は、どのような状態で輸送されているか調査する事でヒントが見つかりそうである。もし全てが飛行機であるならば鹿児島で生産される野菜の船便輸送による鮮度保持保存方法による研究調査が待たれる。筆者が知らないだけで既に確立されているのであれば朗報であるが。
鹿児島県の農水産物輸出について今月号だけでは言い尽くせないので、次号でこの続きを書きたい。
(貿易ニュース鹿児島2005.7月号掲載)