当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!
その23
直接輸入でより安く仕入れたいと誰もが思うが、それを躊躇する最も大きなファクターは届いた商品が見本と違う場合の損失である。そこで今回は注文した商品(梱包を含む)が見本と異なり通常の価格では販売できない時のクレーム処理の事例を紹介します。
マレーシアから到着の輸入雑貨のコンテナを開けると、商品自体には問題ないが化粧箱の印刷に光沢が無く少し汚れ、箱を閉じている部分は1回テープが剥がされた後が有り、その上に再度透明テープで封がされていた。それは中古化粧箱を再使用したと想像される。この商品が業務用であれば問題はないが、店頭に並ぶ商品の為にパッケイジの外観は売れ行きを左右するので販売は難しくなる。商品価値を通常の姿に持っていく為には、新しい化粧箱に詰め替える必要がある。そこでマレーシアの輸出業者に事の次第を説明し、新しい化粧箱を送ってほしい旨のメールを出した所「マレーシアから化粧箱だけを送ると海上運賃、通関費用、日本国内の経費等が必要になるので日本で作って欲しい。その費用は払いますので」との返事が返って来た。早速包装資材メーカーに見積りを依頼して、その見積書と日本での詰め替え作業用経費を書いて送った。その数字に異論を唱える事無く、その合計額が翌日電信にて口座に振り込まれた。
タイからの食品用原料の到着貨物を見ると見本と色が違う。お客さんからはこの色では使えないので貨物は引き取れないとの事。確かに見本とは明らかに異なりこれでは無理と判断してタイの輸出業者にクレームすると「今までこのようなクレームを受けたことは無いので見本を送って欲しい」との返事で、早速現物見本を送ると先方も納得した。しかし商品を送り返さないで値引きで解決できないかとの相談である。まずはお客さんに、今回色違いの商品が届いた原因や輸出者からのお詫びの英文とその和訳を添えて、品質はどうですかと尋ねると、「品質に問題は無いが、この現品を使用することで従来の色を出す為には価格の高い同品質の白い物を使う必要が有る」との事。値引きによる解決方法を見出すべく実損を計算し、それに顧客への迷惑料をプラスして輸出者に伝えると、この数字は受けられないとの返事。実損の補填はするが迷惑料は承知しかねると。従来単独での使用を考えていたが白色の同一品質商品を添加する事による製造工程での煩雑、色違いを何とかして使う知恵を出して頂いた誠意、そして今後の追加注文への期待が迷惑料の内訳と説明し受入れてくれた。
クレームの解決には輸出者が納得する事実の証明、即ち到着貨物の見本・写真・分析表等可能な限りの資料提供、クレーム補填数字の理論的根拠、輸入者が考える品質差異の原因などを感情的にならず冷静に根気良く交渉する事が求められる。また輸入者が輸出者の立場としてどの様な解決策を取るか考える事で解決方法が見つかる事もある。
(貿易ニュース鹿児島2004.8月号掲載)