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その22

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その22

弓場秋信氏先月号でアジアのビジネスは「人間関係で動くルールの無い市場。それだけに面白い」との言葉を紹介した。国境を越えてのより良い人間関係の構築は、お互いを理解し尊重する事から始まるのでは。今年海外商談会で訪問するマレーシアの国や人々をより理解する一助になればと思い、あえて複合民族国家のデリケートな部分について触れてみます。
マレーシアはマレー系(マレー人とボルネオ島の先住民族)社会の貧困追放と国内の人種間経済格差の是正を目標とした「ブミプトラ政策(マレー系優先)」を1971年に打ち出し現在も続いている。それは社会を構成している組織や制度の中に人種間シェアー割当制度を適用し、マレー系と華人・インド人の比率が政府により決められている事である。具体的には企業の株式保有率、人種構成にあった雇用比率、奨学金、教育訓練等など・・。例えば公務員の採用者数をマレー系60%非マレー系40%とあれば、受験者は同じ人種内での競争となる。この制度は非マレー系の人々には非平等政策と映るが、各人種間では言語・宗教・生活習慣に余りにも大きな違いが有り同一化は難しい。また35年前の人種暴動事件では多くの犠牲者を出した経験からマレー系の先住性を考慮し複合民族国家運営の知恵として始まった。
マレーシアの各人種の性格についてある例え話で語られることがある。それは、マレー人、華人、インド人の3人がジャングルに住むマレーの虎を観に行こうとの話になった。マレー人曰く「危険だから止めよう」、華人は「面白い、危険ではあるが観に行こう」、インド人は「面白い、行きたいが虎を見るのが嫌いだから行かない」。分析は読者にお任せしますが、職業選択・適応性にもその性格だ出ているように思う。職業を乱暴に大別すると、マレー系は公務員と一・二次産業従事者が多く、華人は商人そしてインド人はゴム・パーム農園の従事者と医者・教師・弁護士等となる。
政府が窓口のビジネスでは、交渉相手はマレー人が中心となる。彼らが信仰するイスラム教の教義について一般的な知識を持ち、宗教に基づく行動を尊重することで信頼が得られる。民間企業との取引では華人が中心となる。彼らは中国本土で見られる拝金主義とは違い、信義を重んじ信頼関係を大切にする。彼らと親しくなると先程の「ブミプトラ政策」が話題になりコメントを求められるが、この政策には内政不干渉の姿勢が肝要である。インド人との接点は非常に少ないが、彼らは弁が立ち書類作成能力も高いので現物・現場重視の交渉が大切である。
マレーシアでは多くの場面で人種の話が出る。その背景と及ぼす影響を考慮しながら接することでビジネスマンとして認められるのでは。
(貿易ニュース鹿児島2004.7月号掲載)

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