その35鹿児島県農水産品輸出について(2)
当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!
その35鹿児島県農水産品輸出について(2)
前回は輸送面(生鮮、冷凍)からの輸出可能国について書きましたが、今回は農水産物の何が鹿児島から輸出可能かを考えてみたい。まずは日本からの輸出実績にそのヒントを求めたく、JETRO発行の海外食品産業による2003年日本の食糧輸出統計を手に入れた。それによると、食料全体の輸出額は約2000億円、輸出上位相手国はアメリカ、香港、台湾、韓国、中国となる。輸出実績が年間1億円以上の商品の中から、筆者の独断で鹿児島からの輸出可能品目を拾い上げると以下の通りである。
品名 | 年間輸出額USD | 2003年上位輸出先 |
牛肉(くず肉を除く) | 2,575,000 | 香港、台湾、北朝鮮、スイス、インドネシア |
鶏肉(くず肉を含む) | 2,706,000 | 香港、中国、パナマ |
肉類調製品 | 3,169,000 | 香港、中国、米国、タイ、韓国 |
液卵・乾燥卵 | 2,133,000 | 中国、韓国、ドイツ、米国、香港 |
ヒラメ・カレイ | 6,146,000 | カナダ、中国、カナリア、米国、韓国 |
かつお | 48,454,000 | タイ、サモア、インドネシア |
びん長まぐろ | 26,753,000 | タイ、南アフリカ |
魚のフイレ | 38,113,000 | 米国、ニュージランド、中国 |
水産練り商品 | 31,195,000 | 米国、香港、台湾、オランダ、 |
米 | 6,365,000 | カボベルデ、ニジェール、台湾、 |
うどん、ソーメン,そば | 15,094,000 | 米国、香港、シンガポール、台湾 |
温州みかん | 4,764,000 | カナダ、米国、香港 |
梨 | 5,417,000 | 台湾、香港、米国、オーストラリア |
柿 | 1,117,000 | タイ、香港、台湾 |
栗 | 2,500,000 | 中国、韓国 |
野菜(生鮮、冷蔵) | 2,725,000 | 米国、台湾、香港、韓国、シンガポール |
野菜(冷凍) | 1,771,000 | 米国、台湾、香港、シンガポール、中国 |
野菜(乾燥) | 4,165,000 | 香港、米国、北朝鮮、韓国、ベトナム |
キャンデイー菓子 | 36,660,000 | 香港、米国、台湾、韓国、シンガポール |
砂糖菓子 | 42,576,000 | 香港、米国、台湾、韓国、シンガポール |
醤油 | 23,265,000 | 米国、中国、香港、韓国、オーストラリア |
味噌 | 11,504,000 | 米国、韓国、台湾、香港、カナダ |
野菜調製品 | 18,901,000 | 米国、台湾、香港、韓国、英国 |
上記の表より現在何が、何処の国に輸出されているか理解頂けたと思います。既に日本からの実績がある商品を鹿児島から輸出する事と、鹿児島で生産される商品を日本が輸出している国に紹介する。即ちすでに有る市場にアプローチする。その結果で次の戦略を練るとしては。次号でさらに農水産物の輸出について触れます。
(貿易ニュース鹿児島2005.8月号掲載)
その34鹿児島県農水産品輸出について(1)
当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!
その34鹿児島県農水産品輸出について(1)
政府は外国からの農水産物の輸出攻勢による「守り」一辺倒から、日本の農水産物の輸出へと「攻め」に力を入れてきた。そこで今回は鹿児島県農水産品の輸出について考えてみたい。
筆者の記憶による過去輸出実績のある鹿児島県農林水産品は、梨、生卵、ネギ、ハマチ、カンパチ、ブリ、お茶、水産練り商品、焼酎、梅酒、竹(釣竿、孟宗竹)、木材、軽石、有機肥料などである。それらの中には円高による価格上昇や他国との競争に破れたり、航空路線の廃止と共に消え現在は輸出されていない商品もある。また実績は無くとも可能性を秘めた商品、現在輸出されているが特定の国だけに留まり可能性を残す国に今だ紹介されていない商品もある。
一方欧米では健康食としての日本食に対する評価の高まり、アジアでは富裕層の食材に対する「安全・安心」へのこだわり、それらが新たな市場として形成・拡大しつつある。過去の実績、現在の流れを踏まえ如何にしてそれを形にするか。
まずは何を何処の国に輸出するかを決めて行動に移すわけですが、農水産物の輸出は、鮮度保持の面で飛行機或いは低温輸送コンテナ使用となる。鹿児島にとっての弱点は、直行航空便がソウルと上海のみである為に生鮮品の輸出は韓国と中国に限られる。もちろん両空港を経由しての他国、或いは国内の福岡・関西空港使用による輸出が可能である。しかし鹿児島だけにしか生産できない物であれば別だが、物流コストの上昇と鮮度で空港隣接県の同等産品に負けてしまう。
上海、ソウル以外への輸出となると船による冷凍・低温コンテナ使用になる。冷凍保存の商品であれば問題ないが、冷凍では品質に問題のある商品は輸送時の温度・時間設定の研究が必要になる。例えば鳥取の梨は4度Cでの長期保存で品質に問題ない事が証明され船便で輸出されている。果実類は鳥取の梨をヒントに解決策が見つかれば可能性が見えてくる。
野菜類の輸出については、現在日本に韓国・中国を除く国から船便で輸入されている野菜は、どのような状態で輸送されているか調査する事でヒントが見つかりそうである。もし全てが飛行機であるならば鹿児島で生産される野菜の船便輸送による鮮度保持保存方法による研究調査が待たれる。筆者が知らないだけで既に確立されているのであれば朗報であるが。
鹿児島県の農水産物輸出について今月号だけでは言い尽くせないので、次号でこの続きを書きたい。
(貿易ニュース鹿児島2005.7月号掲載)
その33
当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!
その33
世界貿易の秩序維持・発展を目的として、140以上の国と地域が参加して世界貿易機関(WTO)が1995年に設立され、輸入自由化、関税、貿易管理制度などについて議論・取極め・勧告がなされてきた。最近では多国間交渉に変わり2国間による自由貿易協定(FTA)締結に目が向き、日本も多くの国と交渉を行っているので、それをビジネスチャンスとしてどう生かすか考えてみたい。
この協定は、貿易、投資・サービス、知的財産、人の移動、ビジネス環境制度など2国間に関する事項の自由化を目的としている。先進国同士では自由化が進んでいるので今は先進国と中進国の組み合わせによる話し合いが多い。日本の場合、相手国が求める自由化は農水産物と人材の受け入れであり、日本は鉱工業品の関税撤廃が最重要関心事項である。それらの要求は双方にとり高いハードルではあるが、段階的に開放が進むと思われる。
農水産物の日本への輸入で障害となっているのは、高関税と非関税障壁である。非関税障壁とは輸入関税率以外での障壁で、先月号で紹介したIQ制度、動植物検疫などが上げられる。農水産物の高関税は日本の一次産業保護と食料安保・自給率など種々の考え方があるが、日本が世界にどれだけの製品を輸出しているかを考えると早晩低関税あるいは無税へと移行するでしょう。IQ制度も農水産物の一部に適用されている高関税と同様な考え方で制度が維持されているが、既得権業者保護でしかない。過去、日本の保護政策は外圧により、あるいは外圧を利用する形で廃止された例がある。
現在日本のFTA締結国はメキシコそしてシンガポールが続いている。交渉中はマーレーシア、タイ、フイリピン、韓国、そして多くの国と締結に向け研究することで合意している。マスコミを通じて報道される会談内容や政府機関の広報を通じて交渉内容を入手し、日本がどの分野、商品、サービス、人材受け入れで門戸を開放するのか。また相手国が日本にどのようなメリットを与えるのか注視しながら早めの対策、仕掛けが新たなビジネスチャンスを生むと考える。
(貿易ニュース鹿児島2005.6月号掲載)
その32
当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!
その32
右肩上りで拡大していた中国との取引が、中国内での反日デモや日本製品不買運動などを前に不透明観が拡がっている。この騒動は一時的で早晩収束に向かうと願望を込めて思うが、以前この項で「中国プラスワン」について述べた様にリスク回避策を常に頭に入れておくべきでしょう。
今回は輸入関税について述べてみたい。日本は先進工業国で貿易収支も大幅な黒字国ながら、国内産業保護育成の観点から輸入関税ゼロの完全自由化にしている訳ではない。動植物防疫面での規制品目を除く輸入量制限品目は、農水産関連商品が最も多く次に中小企業が手がける産地形成型商品である。輸入量制限には、IQと呼ばれる輸入割当制度と関税を課す方法が取られている。IQは、政府より割り当てられた数量枠を持つ業者だけが輸入可能で、IQ指定品目は農水産物が中心である。枠を持つ指定輸入業者だけの独壇場で一般の輸入業者にとっては羨望の的である。政府によるIQ数量枠と指定業者は毎年申請を受け付ける形で決められるが、通常は前年度実績がないと申請できない。言い換えれば既存の業者保護である。最近では新規参入者用に若干の枠が設けられたりしているので、通商広報を見るなり貿易協会に問い合わせてみては如何でしょうか。
次に一般輸入関税ですが、実行関税率表を見ると税率は、基本、協定、特恵、暫定の4種の税率欄がある。同一品目でもそれぞれの欄で税率が変わる場合がある。輸入者にとっては当然ながら関税は低く出来れば無税が好ましい。この4種の中で最も皆さんが興味を持ち注目するのは特恵関税でしょう。それは輸入する時期、国・地域、書類の有無で関税が変わるからです。特恵関税とは、開発途上の国作りに貢献する事を目的に、その国・地域からの輸入に対し通常決められた関税より安くしてその国経済活性化の手助けをする。従ってその税率が適用される国・地域は定められているから該当国からの輸入はこの制度を活用すべきです。但しそれには原産国を証明する書類の原本が必要です。また商品ごとに年間の輸入数量枠或いは適用期間が決められている場合が有るので輸入に当って事前のチェックを怠らないように。
輸入する商品が実行関税率の、どの商品分類に該当し関税はと迷ったときは事前に原料、製造工程、見本などの資料を税関に提出して事前審査を受けられることをお勧めします。
(貿易ニュース鹿児島2005.5月号掲載)
その31
当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!
その31
阪神大震災で神戸港が被害を受け港の使用が制限された時期、急場しのぎで地方港に貨物船が寄港するようになった。水深不足や貨物量の関係で、大型船は韓国釜山港に入港し小型コンテナ貨物船(フイダー船)での配船となった。地方港へのコンテナ船寄港は、貿易の振興に寄与し神戸港修復後も継続、拡大を続け現在では30数港が開港している。
九州管内では、北九州、博多、伊万里、長崎、熊本、八代、薩摩川内、志布志、日南、細島、大分そして4月1日に響灘と12港に定期コンテナ船が就航。貿易業者にとっては選択肢が広がり喜ばしい事である。そこで今回は何を基準に、数ある港の中で何処の港・航路を選択したら最も経済的かについて述べてみたい。
輸入の場合、輸出者からの見積りはFOB(海上運賃は輸入者払い)価格と、輸出者が想定する揚げ地数港の海上運賃を要求すべきでしょう。それはトータル経費(海上運賃、陸上トラック或いはコンテナの状態で運ぶ運賃)が、どの港が一番安いかを決める為に必要だからです。海上運賃だけを見ると九州内ではおそらく北九州や博多港が一番安いでしょうが、到着後の陸上運賃が如何ほどなのかで、使用する港を決めるべきである。また歴史の浅い港では、港の認知度を上げ貨物量を増やすべく、荷主に対し助成金を交付している所も有る。薩摩川内港はその一つで、新航路使用を躊躇する荷主の背中を押してくれる役割をしている。
港が決定したならば、海上運賃は輸出者が支払うC&Fにするか、輸入者払いのFOBで契約するかですが、輸出者の提示した海上運賃と、輸入者が船社代理店に尋ねた運賃の比較で決まるでしょう。但し同じ港に複数の船社が就航している時は、船社間で同一運賃とは限らないので、其々に見積もり依頼をすべきです。そして運賃に差異がある場合、その船社航路の内容を確かめてからの確定をお勧めします。運賃が安い場合は、寄港地が多く到着までに日数を要すケースも有ります。また寄港地で船の変更、すなわち積み替えが条件の場合も有るので確認が必要です。貨物の内容や納期を考慮し船社を選択しては。
輸出はC&Fで価格を提示する場合が普通である。当然ながら、輸送経費を低く抑える為にはどこの港を使えば良いか研究する事が、成約への決め手の一つになる。価格競争が厳しい中、経費の節減に向けての参考になれば幸いです。
(貿易ニュース鹿児島2005.4月号掲載)
その30
当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!
その30
貿易はロット(取引数量)が大きいので在庫や販路を考えると二の足を踏む、との声を良く聞く。海上輸送はコンテナ貨物が主流になり、コンテナ1本当りでの運賃表示となる。しかしコンテナに満たない貨物(混載)の取引は出来ないのかと言うとそうでもない。そこで今回は混載について書いてみたい。
海上コンテナには、常温と温度管理可能(冷凍、低温)な2種類があり、長さでは20と40フィート、通常の高さより高いHQそして上部が開放できるオープントップがある。この中から貨物により使用するコンテナが選ばれる。混載貨物の場合は常温(ドライ)コンテナ以外の使用は難しいので、温度管理が必要な貨物は数量が少なくてもコンテナ1本使用する事となる。
混載貨物(CFSカーゴ)の海上運賃は容積(m3)で計算される。20フィートコンテナの内容積は27m3で、1m3当りの海上運賃がコンテナ1本当りの27分の1であればコストの事を考えずに自由に混載を使用できる。しかし通常は約11m3でコンテナ1本分の運賃支払いとなる。また混載の貨物を引き受ける輸出港、或いは輸入港が少ないので事前の確認が必要になる。神戸港は殆ど全ての国の貨物を受けるが地方港では少ない。それは混載と言えども、複数の荷主の貨物をコンテナに入れて運ばないと採算が合わないからである。ですから時にはコンテナが一杯になるまでその貨物が港で留め置きされる場合もある。以上の事に留意しながらトータルコストの計算をして混載を検討する。
混載の活用として考えられるのがまず輸出である。日本からの輸出は付加価値の高い商品が多いので経費を吸収できるケースが多い。また輸入者にとってもCFS貨物での輸入はリスクが少なくてすむ。前述のごとくコンテナ単位による貨物(CY)とCFSでは係る経費が異なるので見積もりは、CYとCFSを併記して顧客の選択肢を広げて上げる事が望ましい。また輸入に関してもコストは高くなるが、少量で品質・販路を調査する手段として有効である。
(貿易ニュース鹿児島2005.3月号掲載)
その29
当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!
その29
最近目に触れる物で原料から最終製造工程まで純日本国産を探すことは困難になった。以前は消費者に原産国に対する拘りがあり、特に開発途上国製に対するチェックは厳しい物があった。しかし可処分所得が伸びないなか、消費者が価格重視の購買へと移行し原産国に対する見方も変化した。また地域が誇る特産品はその地にある原料を使って土地の人によって作られてきた。しかし最近ではその特産品でさえも怪しくなっている。この流れは止まりそうに無く貿易に携わる人や会社あるいはこの分野を志す人にとっては商機拡大のチャンスである。
先進国で生産性を上げ、これ以上のコストダウンは不可能と思われるぐらい努力して製造した商品の価格よりさらに約2割安い価格が世界には存在する。それが“チャイナプライス”と呼ばれる中国製である。競合先が“チャイナプライス”で見積りすれば戦う前に退場せざるを得ない。日本を含む世界で存在感を増している中国製品を扱わずしてニーズに応えることは難しい現状で、売れる商品を探す方法は如何に。中国商品を探す方法は色々あるが見本市の視察が入口としては最も効率的と思う。ご存知のように最大の見本市は年2回開催される「広州交易会」で、その次に有名な見本市は「華東交易会」である。そこで今回3月に開催される「華東交易会」について述べます。
華東交易会についての一般情報は「貿易ニュース」で紹介されるでしょうから省略しますが、広州と並ぶ産業の中心地華東地区には中国を代表する企業や日系を始めとする外資企業がひしめいている。それらの企業や地方政府がブースを設け、新商品や現在の売れ筋商品を陳列し熱気あふれる商談が入場者との間で交わされる。多くの出品業者の中でどの企業を購入先に選ぶか悩むところだが私なりの判断基準を紹介したい。注文したい商品が複数のブースで見つかり、陳列された見本の品質にも遜色ない時 ①日本への輸出実績は ②日本の商習慣を理解しているか ③商道徳に対する考え方 を質問してその答えを元に結論を出す。もし可能ならば現地で1社に絞らず帰国後数社にコンタクトしてレスポンス状況を見てからでも遅くないでしょう。また過度な値引き要求は慎んだほうが賢明でしょう。何故なら中国では売価に見合った品質の商品、即ち相当の原料・製造工程により製造されます。
(貿易ニュース鹿児島2005.2月号掲載)
その28
当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!
その28
「冬ソナ」に代表される最近の「韓流ブーム」は、ソウルとの直行便が就航している鹿児島にも押し寄せ「日韓首脳会議」の指宿開催で最高潮に達している感がある。韓国と日本との関係は「近くて遠い国」と言われる時期が長かったが、最近は「近くて近い国」になってきたと実感させられる。この流れを経済に携わる人はどう捉えビジネスに生かすかを考えてみたい。
韓国と日本は地理的に近く歴史的にも深い関係から経済構造や生産物に類似点が多く、補完関係と言うより雁行型経済圏から競合関係に移行している。マクロ的に見ると物流面でのビジネスチャンスは「韓流ブーム」にあやかれそうにもない。また韓国経済の特徴として言われている財閥系大企業支配が、日本や台湾のようなサポートインダストリー群の成長を遅らせ、私共の取引相手先と成り得る中規模企業数が少ない。しかし最近では独立系中小企業が多数興り、限られた韓国内のマーケットだけでなく政府の後押しも得ながら積極的に海外に販路を求めるべく活動している。財閥系企業はロットが大きく敷居も高かったが新興企業群の成長は、私共にとってビジネスチャンス到来である。
何処の国でも一緒だが取引を始めるにあたりその国の国民性や商取引への考え方を理解する事が大切である。韓国との過去の取引経験から印象に残ることは、取引に対する一生懸命さ積極さである。韓国訪問の折に「焼物の里」を見学した。訪問先の工場は歴史的に薩摩焼とも関係が深く韓国屈指の工場であった。製品の中に亀壷を見つけたので鹿児島ではこの様な壷を使って黒酢を作る旨の話をすると、社長は鹿児島で使われている形状・サイズを質問した。それから数ヶ月が経過したある日電話があり「今あなたが言っていた黒酢用亀壷の見本を作って下関に着いた。これから鹿児島までタクシーで持って行く」との事。韓国訪問の際は単なる情報交換でしかなく購入の意志表示もしなかったにも拘らず、見本をタクシー運賃7万円をかけて持ってくるその積極性に脱帽した。その時は成約しなかったが暫くしてその企業とは取引を行っている。
韓国企業との取引で感じることは、前述の例に限らず積極性が有るので他国より楽である。質問事項に対する早い回答、品質に対する理解度の深さ、ビジネスにおける信用の大切さ理解、納期の厳守など価格の次に重要視するファクター全てを満足させてくれる国である。再検討されては如何でしょうか。
(貿易ニュース鹿児島2005.1月号掲載)
その27
当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!
その27
雑貨の輸入で欲しい商品がありながら直輸入を躊躇する理由の一つが注文ロットの大きさである。同じ商品を大量に仕入れ、その販売に要する時間、倉庫料、金利、また完売できずデッドストック化した時のロスなどを考えると前に進めなくなる。そこで今回そのリスクを和らげる取り組みについて籐椅子の輸入を例に輸出業者選定から述べてみたい。
籐椅子はフイリピン、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシアなどで製造されている。一方籐の原木はインドネシアが最大の生産国で、他の国は原料の大半をインドネシアに頼っている。近年インドネシア政府は籐を原木の状態で輸出することを禁止しているので他の国が籐原木を輸入する際は、何がしかの加工を施した状態で輸入し最終製品に加工する。従って製造国の中でインドネシア以外の国は価格面でハンディーを背負う形となるので品質、デザインで差がなければ籐椅子の輸入先としてはインドネシアが最適国となる。
インターネットや貿易協会等への問い合わせにより、インドネシア国内の籐製造メーカー・輸出業者のリストを入手し企業規模・取扱品目・輸出先国などを勘案しながらメールやFaxを送る企業を選ぶ。知らない企業からのカタログや見積り送付依頼に対し、受取った側は郵送費とそれらを準備するのに要する経費を考え、返事を出す価値がある企業かを文面より判断する。従ってFaxやメールの内容は、自社の概要、商品仕様、注文予定数量、支払条件などを魅力ある文で綴る事が肝要である。
届いたカタログ、価格、その他の条件から返事をする会社の絞込みをする。そのポイントは輸入予定の籐椅子を供給出来るのはもちろん、それ以外にどのような商品を製造し、何が日本のマーケットで受入れられ自社の販売努力で売れそうかを検討する。それは最初に述べたように単品での大量注文によるリスクを回避する為には、他の商品を同時に購入することで単品大量から多品種少量の輸入を可能にする。同時に他の商品を扱うことによる売上げ増と、顧客先の商品構成に幅を持たせ、輸入業者としての価値を高めることになる。
籐椅子を例に述べたが、他の商品でも同様のアプローチをすることで成果を得られるのではと思う。また輸入先がメーカーであればより安く買えるが一回のオーダーで多品種少量を考えるならば取扱間口の広い現地の商社を活用することも選択肢に入れるべきでは。
(貿易ニュース鹿児島2004.12月号掲載)
その26
当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!
その26
10月25日から30日までタイとマレーシアで開催された貿易協会主催の海外ビジネス商談会に参加した。事前に鹿児島より提出した商談希望品目を基に、両国の貿易機関を通じて申し込みされた地元企業との商談を、26日にバンコックで、28日にクアラルンプールのホテルで行なった。タイでの商談は全て輸出を希望する企業との商談であったがマレーシアでは3分の1は輸入希望業者で、両国の経済状況を反映した形となった。2ヶ所で40社と商談を行なう過密スケジュールの中で訪問以前にコンタクトし商談を進めていた企業以外とは今後商談継続に値するかの絞込みの作業を行なった。それは多くの国内外からの輸出入の引合いに対し、全てに対応する事は時間と経費の負担増となるからである。
輸出の場合、商談相手の見極めは輸出商材あるいはその関連商材の取扱経験、日本との実積、自国での販路、支払方法そして商いに対する考え方・取組姿勢などを元に判断する。その中で私が最も重要視するのは支払方法と商いに対する姿勢である。今回も商談に見えたバイヤーが支払方法は船積後60日の送金でとの条件を提示した。それを拒否すると、半金前送金で残りを船積後の送金でと言われたが、取り消し不能のL/Cか前送金は譲れない条件とした。売りたいがために日本国内と同じような考えで信用売り(売掛け)方式にすると、殆どが後で代金回収不能に陥る。国を超えてのビジネスは考え方の違いから思わぬ誤解が生じたり、クレーム処理がスムーズに行われず損害を被る事もあるので商談中の言葉や態度、通信のやり取りの中で信頼に値する相手か判断する。また最初からsole-agent(その地域での独占輸入販売権)を要求する業者がいるのでその付与に当たっては慎重な対応が必要である。独占輸入販売権の条件を提示し少なくとも1年の実績を見てからの契約が望ましい。そうしないと契約先の販売力が弱い場合新たな輸入先を探せないからである。
輸入の場合は、立場を変えて前述の「輸出の場合」を読んで頂ければと思いますので省略しますが、取引先の国の選択が最も大切ではと思います。求める商品を日本市場に最も優位な条件で提供できる国は何処なのか、様々な角度から検討して1-2カ国に絞る作業から始めるべきと思います。
(貿易ニュース鹿児島2004.11月号掲載)