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コラム

上海鹿児島線就航5周年及び中日国交正常化35周年記念事業リポート

上海鹿児島線就航5周年及び中日国交正常化35周年記念事業リポート

鹿児島県かごしまPR課 片野坂 昭彦

去る8月25日(土)~28日(火),中国東方航空の鹿児島・上海線就航5周年及び日中国交正常化35周年記念として,知事を団長とする総勢100名の訪問団が上海を訪れました。上海では,上海市政府や中国東方航空,関係機関を表敬訪問し,鹿児島・上海線の増便や相互交流などについて要請したほか,県酒造組合連合会と連携し,本県の特産品である焼酎の商談会やPRイベントを実施しましたので,報告します。
今回の訪問団は,知事,県議会議長,県商工会議所連合会会長のほか,県酒造組合連合会,県特産品協会,県漁業協同組合連合会,電通九州,マスコミ(KKB,MBC,読売新聞),JTB旅館ホテル連盟,県関係者など総勢約100名となりました。
8月27日(月),上海の日系ホテルである花園飯店において,県の特産品である本格焼酎の海外市場開拓の推進を図るため,商談会を通じて積極的な販路の拡大を図るとともに,上海市民に本格焼酎の美味しさや楽しみ方などについて理解を深めてもらい,県産食品の消費拡大を目的に,商談会,セミナー,レセプションの3部構成で県,県酒造組合連合会,県特産品協会,県漁業協同組合連合会の共催事業として実施しました。

「鹿児島県本格焼酎・県産食品商談会」は,県内の酒造会社13社と県漁連,菓子,さつま揚げのメーカーなど計16社が参加しました。商談会には,本格焼酎(芋・麦・米・蕎麦・黒糖など)60銘柄のほか,ブリ・トビウオ・キビナゴ・タカエビの刺身・カツオのたたき等の水産物,さつま揚げ,ハローキティかるかんなどの菓子が出展されました。

上海鹿児島線就航5周年及び中日国交正常化35周年記念事業リポート

出展者:さつま無双,濵田酒造,小正醸造,西酒造,薩摩酒造,山元酒造,田苑酒造,大口酒造,若潮酒造,岩川酒造,小鹿酒造,高崎酒造,弥生焼酎,県漁連,有村屋,馬場製菓
会場では,焼酎製造工程のPRビデオを上映し,焼酎や県産品の展示,試飲をしながらの商談会となりました。原料や麹など焼酎の違いに熱心に耳を傾けるバイヤーが印象的であり,刺身やさつま揚げ,菓子の試食も大変好評でした。日本料理店を中心に30社53名の上海バイヤーが来場し,140件の商談が行われました。
上海は,日本にとって最大の貿易国である中国の表玄関として,今後,輸出が期待される魅力ある大きな市場です。県内の酒造会社が集まって商談会を実施するのは初めてのことであり,本格焼酎をはじめとする県産食品の大きなPRになったと思います。

上海鹿児島線就航5周年及び中日国交正常化35周年記念事業リポート

「本格焼酎セミナー」は,県酒造組合連合会,県との共催により,本格焼酎の特徴や楽しみ方を小売店や飲食店,上海市民の方々などに理解していただくことを目的に開催されました。県酒造組合連合会評議員の濵田雄一郎氏を講師に迎え,「世界の蒸留酒『本格焼酎』,その魅力と愉しさ」と題した講演が行われました。
「芋焼酎の原料であるサツマイモ(鹿児島では「唐いも」という)は,実は中国から伝わってきており,中国が非常に身近に感じられる」と始まった講演は,聴講しながら,実際に試飲してもらうという趣向を凝らしたものでした。番号が付された焼酎コップが全座席のテーブルに準備され,白麹・黒麹・黄麹の芋焼酎,黒糖焼酎など,麹の種類が異なる焼酎や水で割った焼酎を実際に試飲しながら,「麹菌(白麹・黒麹・黄麹),麹(米・麦・いも),蒸留方法(減圧・常圧)等の違いによって,焼酎の味や香り等が色々変化するのが本格焼酎である」という解説に,参加者はそれぞれのコップに口をつけながら,時には首を傾け,本格焼酎の特徴や魅力を実感していたようでした。特に,「中国の蒸留酒『白酒(パイチュウ)』では行わない,『酒を割る』飲み方が一般的であり,アルコール濃度をワインと同程度としても味が崩れず,湯・水・ロック等様々な楽しみ方ができる飲み物が『本格焼酎』である」ことが理解されたように思います。

上海鹿児島線就航5周年及び中日国交正常化35周年記念事業リポート

また,中国では最近,健康志向が高まっていることから,「本格焼酎の特徴の一つに,血液をさらさらにする血栓溶解酵素の活性化能力が赤ワインの2倍も高く,他のアルコール飲料より健康的であり,日本では高い評価が得られ,特に近年は若い女性にも好んで飲まれている」「蒸留酒としては極めて稀な食中酒で,ワインと同じように食事とともに楽しめ,特に中華料理との相性は抜群に良い酒であるので,中国の女性の皆さんにも是非飲んで欲しい」と,本格焼酎は健康に良く,中華料理と合う飲み物であることを講演され,本格焼酎のイメージアップが図られたのではないかと思います。 
最後に,「鹿児島の芋焼酎は,『薩摩』焼酎として,ボルドー,コニャックのように,WTOのTRIPS協定に基づく『地理的表示』が認められ,今後,ウィスキーを始めとする五大蒸留酒に並ぶ,『世界の蒸留酒』として将来性の高い魅力的な蒸留酒である」ことを紹介し,講演を終えました。
セミナーには,上海の飲食店関係業界誌や日本料理店等に配布したチラシなどにより公募した上海市民や在上海の日本人など約100名が参加し,熱心に聞き入っていました。セミナー受講後のアンケートでは,鹿児島の本格焼酎を今後,飲んでみたいという声が多く,特に,「健康に良く飲みやすい」「飲み方のバリエーションが多い」点が人気のようでした。また,今後,中国の方に鹿児島の本格焼酎をもっと飲んでいただくための取り組みとして,「TVCM,広告をどんどんやって欲しい」「上海のスターに飲んでもらいトレンドにする」「大手中華料理店に置いてもらう」等の意見も寄せられました。

上海鹿児島線就航5周年及び中日国交正常化35周年記念事業リポート

上海の締めくくりとして,上海鹿児島線就航5周年及び中日国交正常化35周年記念「中華料理と焼酎の夕べin上海」を開催しました。
会場の正面ステージには,本県の本格焼酎を代表する103銘柄の焼酎瓶が展示され,来場者の目を引きつけていました。開会に先立って,知事や来賓の方々など8人がステージに並び,「チェスト(鹿児島弁で“それいけ”の意)」の大きな掛け声で盛大な鏡開きを行い,かごしま色のアピールができたと思います。
それぞれのテーブルには,各蔵元の焼酎が置かれ,参加者の話題に花を添えていました。会場一角に用意された試食用の「さつま揚げ」は,瞬く間になくなり,会場にずらりと並んだ各蔵元の焼酎バーでは,参加者一人ひとりに合わせた飲み方(お湯割り・水割りなど)を聞きながら,焼酎の楽しみ方や魅力,おいしい飲み方を丁寧に説明するなどして,参加者に振る舞っていました。焼酎バーは,おかわりを求める方,各銘柄の説明を詳しく聞く方,どうやったら手に入るかを聞く方など,最後まで賑わっていました。
また,焼酎やさつま揚げ,かるかんなどの県産品が当たる抽選会も行いました。県酒造組合連合会の吉野副会長が番号を発表するたびに会場のあちこちで歓声が上がるなど,上海の方々に大変喜ばれるイベントとなったようです。
レセプションは,上海市人民政府副秘書長をはじめ,旅遊事業管理委員会,港口管理局,外事弁公室などの市政府幹部に加え,在上海日本国総領事館,JETRO上海,JNTO上海,上海市内旅行社や焼酎セミナーに出席された方など,上海側約100名,鹿児島県側60名の計約160名が参加して大盛況に終わり,本格焼酎の魅力を十分にPRできたのではないかと思います。

上海鹿児島線就航5周年及び中日国交正常化35周年記念事業リポート

上海市政府や現地の飲食店関係や一般市民の方々などと焼酎を通じた交流を行うことで,本格焼酎が健康に良い等の特徴や中華料理との相性の良さ,焼酎の美味しい飲み方等を総合的に紹介することができ,本格焼酎をはじめとした県産食品の認知度の高まり,海外市場開拓に繋がるものになったと思います。
鹿児島銀行上海事務所の西田所長をはじめ,多くの皆さんに御協力をいただきました。この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

上海鹿児島線就航5周年及び中日国交正常化35周年記念事業リポート

その35鹿児島県農水産品輸出について(2)

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その35鹿児島県農水産品輸出について(2)

弓場秋信氏前回は輸送面(生鮮、冷凍)からの輸出可能国について書きましたが、今回は農水産物の何が鹿児島から輸出可能かを考えてみたい。まずは日本からの輸出実績にそのヒントを求めたく、JETRO発行の海外食品産業による2003年日本の食糧輸出統計を手に入れた。それによると、食料全体の輸出額は約2000億円、輸出上位相手国はアメリカ、香港、台湾、韓国、中国となる。輸出実績が年間1億円以上の商品の中から、筆者の独断で鹿児島からの輸出可能品目を拾い上げると以下の通りである。

 

 

品名 年間輸出額USD 2003年上位輸出先
牛肉(くず肉を除く) 2,575,000 香港、台湾、北朝鮮、スイス、インドネシア
鶏肉(くず肉を含む) 2,706,000 香港、中国、パナマ
肉類調製品 3,169,000 香港、中国、米国、タイ、韓国
液卵・乾燥卵 2,133,000 中国、韓国、ドイツ、米国、香港
ヒラメ・カレイ 6,146,000 カナダ、中国、カナリア、米国、韓国
かつお 48,454,000 タイ、サモア、インドネシア
びん長まぐろ 26,753,000 タイ、南アフリカ
魚のフイレ 38,113,000 米国、ニュージランド、中国
水産練り商品 31,195,000 米国、香港、台湾、オランダ、
6,365,000 カボベルデ、ニジェール、台湾、
うどん、ソーメン,そば 15,094,000 米国、香港、シンガポール、台湾
温州みかん 4,764,000 カナダ、米国、香港
5,417,000 台湾、香港、米国、オーストラリア
1,117,000 タイ、香港、台湾
2,500,000 中国、韓国
野菜(生鮮、冷蔵) 2,725,000 米国、台湾、香港、韓国、シンガポール
野菜(冷凍) 1,771,000 米国、台湾、香港、シンガポール、中国
野菜(乾燥) 4,165,000 香港、米国、北朝鮮、韓国、ベトナム
キャンデイー菓子 36,660,000 香港、米国、台湾、韓国、シンガポール
砂糖菓子 42,576,000 香港、米国、台湾、韓国、シンガポール
醤油 23,265,000 米国、中国、香港、韓国、オーストラリア
味噌 11,504,000 米国、韓国、台湾、香港、カナダ
野菜調製品 18,901,000 米国、台湾、香港、韓国、英国


上記の表より現在何が、何処の国に輸出されているか理解頂けたと思います。既に日本からの実績がある商品を鹿児島から輸出する事と、鹿児島で生産される商品を日本が輸出している国に紹介する。即ちすでに有る市場にアプローチする。その結果で次の戦略を練るとしては。次号でさらに農水産物の輸出について触れます。

(貿易ニュース鹿児島2005.8月号掲載)

その34鹿児島県農水産品輸出について(1)

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その34鹿児島県農水産品輸出について(1)

弓場秋信氏政府は外国からの農水産物の輸出攻勢による「守り」一辺倒から、日本の農水産物の輸出へと「攻め」に力を入れてきた。そこで今回は鹿児島県農水産品の輸出について考えてみたい。
筆者の記憶による過去輸出実績のある鹿児島県農林水産品は、梨、生卵、ネギ、ハマチ、カンパチ、ブリ、お茶、水産練り商品、焼酎、梅酒、竹(釣竿、孟宗竹)、木材、軽石、有機肥料などである。それらの中には円高による価格上昇や他国との競争に破れたり、航空路線の廃止と共に消え現在は輸出されていない商品もある。また実績は無くとも可能性を秘めた商品、現在輸出されているが特定の国だけに留まり可能性を残す国に今だ紹介されていない商品もある。
一方欧米では健康食としての日本食に対する評価の高まり、アジアでは富裕層の食材に対する「安全・安心」へのこだわり、それらが新たな市場として形成・拡大しつつある。過去の実績、現在の流れを踏まえ如何にしてそれを形にするか。
まずは何を何処の国に輸出するかを決めて行動に移すわけですが、農水産物の輸出は、鮮度保持の面で飛行機或いは低温輸送コンテナ使用となる。鹿児島にとっての弱点は、直行航空便がソウルと上海のみである為に生鮮品の輸出は韓国と中国に限られる。もちろん両空港を経由しての他国、或いは国内の福岡・関西空港使用による輸出が可能である。しかし鹿児島だけにしか生産できない物であれば別だが、物流コストの上昇と鮮度で空港隣接県の同等産品に負けてしまう。
上海、ソウル以外への輸出となると船による冷凍・低温コンテナ使用になる。冷凍保存の商品であれば問題ないが、冷凍では品質に問題のある商品は輸送時の温度・時間設定の研究が必要になる。例えば鳥取の梨は4度Cでの長期保存で品質に問題ない事が証明され船便で輸出されている。果実類は鳥取の梨をヒントに解決策が見つかれば可能性が見えてくる。
野菜類の輸出については、現在日本に韓国・中国を除く国から船便で輸入されている野菜は、どのような状態で輸送されているか調査する事でヒントが見つかりそうである。もし全てが飛行機であるならば鹿児島で生産される野菜の船便輸送による鮮度保持保存方法による研究調査が待たれる。筆者が知らないだけで既に確立されているのであれば朗報であるが。
鹿児島県の農水産物輸出について今月号だけでは言い尽くせないので、次号でこの続きを書きたい。  
(貿易ニュース鹿児島2005.7月号掲載)

九州との縁

九州との縁

江蘇省中小企業日本代表処 首席代表 塗家飛

九州との縁今年3月から江蘇省政府の駐日経済貿易の首席代表として、福岡事務所で働きはじめました、塗家飛です。私は、かつて鹿児島県の平成14年度の海外技術研修青年として、鹿児島県貿易協会で研修しておりました。今でも鹿児島での研修生活や綺麗な景色、人のやさしさが心に残っており、本当に懐かしく思います。2003年2月に中国に帰国してからは、江蘇省政府の経済貿易委員会で、対日経済交流の担当者として勤めていました。そして、この春に再度来日して現在の職に就き、これから鹿児島県貿易協会の元研修生として、鹿児島県貿易協会の会員の皆様に中国ビジネスに関しできるかぎり協力していきたいと思っております。

現在、中国は日本にとって第一の貿易相手国であり、中国にとって日本は第三の貿易国です。このように経済分野においてなくてはならない相手であるだけでなく、地域的にも永遠の隣人ですから、両国国民の利益のために経済交流を大切に守らなければならないと思います。江蘇省はGDPと海外貿易の総額が中国各省のなかで第2位ですが、海外からの投資額はトップになっています。九州と江蘇省は両国間で最も近い地域であり、貿易や経済交流の規模をさらに拡大し、またその基盤をより強固なものにしていくことを目指して、江蘇省は福岡から鹿児島までを中心とする九州との交流窓口を開設することになりました。双方の企業やビジネスなどの交流を支援していくため、江蘇省の駐福岡代表処は江蘇省省内のビジネスパートナーを積極的に紹介し、よい情報やサービスなどを提供していきたいと思っております。もし、双方の企業が相手側の市場へ進出したいという場合は、私も精一杯案内します。
例えば、現在鹿児島産の焼酎が中国の一部で人気がありますが、これを販売したい会社がありましたら江蘇省のよい代理商を紹介いたします。また、江蘇省の企業が廃プラや廃棄の電機などを輸入するため、日本のビジネスパートナーを探すことがあります。このような場合には経済交流のかけ橋として、精一杯努力していきたいです。

福岡へはこの春に来たばかりですが、来て間もない頃に福岡地震が発生し、余震もしばらく続き、このような大規模な地震の体験がない私は本当にびっくりしました。江蘇省からは中国へ一時
的に帰国してもよいという指示があり、私はこの時期に帰国すべきか否かも含め、落ち着いて、いろいろなことを考えてみました。私の日本での任期は3年間あります。江蘇省での安定的な仕事や生活から離れ、また両親とも離れ、単身赴任で福岡へ来て代表処を始めた時期は、仕事も生活も研修生の時とは違い、いろいろな手続き等も一人でこなさなければならず、慣れるまでは本当に大変でした。そんな時桜島と一緒に暮らしていらっしゃるたくましい鹿児島の方々のことを思い出し、だんだん元気になってきました。そして、自分が3年という期間の中でできるかぎり中日双方の経済交流の促進のために力を尽くしていこうと思いました。

鹿児島での研修に続き、今回の福岡での駐在の機会を与えられ、私は九州に縁を感じます。会員の皆様、どうかよろしくお願いします。

駐日代表処(事務所)の連絡先:
〒810-0001 福岡市中央区天神1丁目4-2 エルガーラ7階 江蘇省中小企業日本代表処
電話とFAX番号:092-431-3035
携帯電話番号:090-9651-1116
E-mail:tokahi20023@yahoo.co.jp

その33

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その33

弓場秋信氏世界貿易の秩序維持・発展を目的として、140以上の国と地域が参加して世界貿易機関(WTO)が1995年に設立され、輸入自由化、関税、貿易管理制度などについて議論・取極め・勧告がなされてきた。最近では多国間交渉に変わり2国間による自由貿易協定(FTA)締結に目が向き、日本も多くの国と交渉を行っているので、それをビジネスチャンスとしてどう生かすか考えてみたい。
この協定は、貿易、投資・サービス、知的財産、人の移動、ビジネス環境制度など2国間に関する事項の自由化を目的としている。先進国同士では自由化が進んでいるので今は先進国と中進国の組み合わせによる話し合いが多い。日本の場合、相手国が求める自由化は農水産物と人材の受け入れであり、日本は鉱工業品の関税撤廃が最重要関心事項である。それらの要求は双方にとり高いハードルではあるが、段階的に開放が進むと思われる。
農水産物の日本への輸入で障害となっているのは、高関税と非関税障壁である。非関税障壁とは輸入関税率以外での障壁で、先月号で紹介したIQ制度、動植物検疫などが上げられる。農水産物の高関税は日本の一次産業保護と食料安保・自給率など種々の考え方があるが、日本が世界にどれだけの製品を輸出しているかを考えると早晩低関税あるいは無税へと移行するでしょう。IQ制度も農水産物の一部に適用されている高関税と同様な考え方で制度が維持されているが、既得権業者保護でしかない。過去、日本の保護政策は外圧により、あるいは外圧を利用する形で廃止された例がある。
現在日本のFTA締結国はメキシコそしてシンガポールが続いている。交渉中はマーレーシア、タイ、フイリピン、韓国、そして多くの国と締結に向け研究することで合意している。マスコミを通じて報道される会談内容や政府機関の広報を通じて交渉内容を入手し、日本がどの分野、商品、サービス、人材受け入れで門戸を開放するのか。また相手国が日本にどのようなメリットを与えるのか注視しながら早めの対策、仕掛けが新たなビジネスチャンスを生むと考える。
(貿易ニュース鹿児島2005.6月号掲載)

その32

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その32

弓場秋信氏右肩上りで拡大していた中国との取引が、中国内での反日デモや日本製品不買運動などを前に不透明観が拡がっている。この騒動は一時的で早晩収束に向かうと願望を込めて思うが、以前この項で「中国プラスワン」について述べた様にリスク回避策を常に頭に入れておくべきでしょう。
今回は輸入関税について述べてみたい。日本は先進工業国で貿易収支も大幅な黒字国ながら、国内産業保護育成の観点から輸入関税ゼロの完全自由化にしている訳ではない。動植物防疫面での規制品目を除く輸入量制限品目は、農水産関連商品が最も多く次に中小企業が手がける産地形成型商品である。輸入量制限には、IQと呼ばれる輸入割当制度と関税を課す方法が取られている。IQは、政府より割り当てられた数量枠を持つ業者だけが輸入可能で、IQ指定品目は農水産物が中心である。枠を持つ指定輸入業者だけの独壇場で一般の輸入業者にとっては羨望の的である。政府によるIQ数量枠と指定業者は毎年申請を受け付ける形で決められるが、通常は前年度実績がないと申請できない。言い換えれば既存の業者保護である。最近では新規参入者用に若干の枠が設けられたりしているので、通商広報を見るなり貿易協会に問い合わせてみては如何でしょうか。
次に一般輸入関税ですが、実行関税率表を見ると税率は、基本、協定、特恵、暫定の4種の税率欄がある。同一品目でもそれぞれの欄で税率が変わる場合がある。輸入者にとっては当然ながら関税は低く出来れば無税が好ましい。この4種の中で最も皆さんが興味を持ち注目するのは特恵関税でしょう。それは輸入する時期、国・地域、書類の有無で関税が変わるからです。特恵関税とは、開発途上の国作りに貢献する事を目的に、その国・地域からの輸入に対し通常決められた関税より安くしてその国経済活性化の手助けをする。従ってその税率が適用される国・地域は定められているから該当国からの輸入はこの制度を活用すべきです。但しそれには原産国を証明する書類の原本が必要です。また商品ごとに年間の輸入数量枠或いは適用期間が決められている場合が有るので輸入に当って事前のチェックを怠らないように。
輸入する商品が実行関税率の、どの商品分類に該当し関税はと迷ったときは事前に原料、製造工程、見本などの資料を税関に提出して事前審査を受けられることをお勧めします。
(貿易ニュース鹿児島2005.5月号掲載)

その31

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その31

弓場秋信氏阪神大震災で神戸港が被害を受け港の使用が制限された時期、急場しのぎで地方港に貨物船が寄港するようになった。水深不足や貨物量の関係で、大型船は韓国釜山港に入港し小型コンテナ貨物船(フイダー船)での配船となった。地方港へのコンテナ船寄港は、貿易の振興に寄与し神戸港修復後も継続、拡大を続け現在では30数港が開港している。
九州管内では、北九州、博多、伊万里、長崎、熊本、八代、薩摩川内、志布志、日南、細島、大分そして4月1日に響灘と12港に定期コンテナ船が就航。貿易業者にとっては選択肢が広がり喜ばしい事である。そこで今回は何を基準に、数ある港の中で何処の港・航路を選択したら最も経済的かについて述べてみたい。
輸入の場合、輸出者からの見積りはFOB(海上運賃は輸入者払い)価格と、輸出者が想定する揚げ地数港の海上運賃を要求すべきでしょう。それはトータル経費(海上運賃、陸上トラック或いはコンテナの状態で運ぶ運賃)が、どの港が一番安いかを決める為に必要だからです。海上運賃だけを見ると九州内ではおそらく北九州や博多港が一番安いでしょうが、到着後の陸上運賃が如何ほどなのかで、使用する港を決めるべきである。また歴史の浅い港では、港の認知度を上げ貨物量を増やすべく、荷主に対し助成金を交付している所も有る。薩摩川内港はその一つで、新航路使用を躊躇する荷主の背中を押してくれる役割をしている。
港が決定したならば、海上運賃は輸出者が支払うC&Fにするか、輸入者払いのFOBで契約するかですが、輸出者の提示した海上運賃と、輸入者が船社代理店に尋ねた運賃の比較で決まるでしょう。但し同じ港に複数の船社が就航している時は、船社間で同一運賃とは限らないので、其々に見積もり依頼をすべきです。そして運賃に差異がある場合、その船社航路の内容を確かめてからの確定をお勧めします。運賃が安い場合は、寄港地が多く到着までに日数を要すケースも有ります。また寄港地で船の変更、すなわち積み替えが条件の場合も有るので確認が必要です。貨物の内容や納期を考慮し船社を選択しては。
輸出はC&Fで価格を提示する場合が普通である。当然ながら、輸送経費を低く抑える為にはどこの港を使えば良いか研究する事が、成約への決め手の一つになる。価格競争が厳しい中、経費の節減に向けての参考になれば幸いです。
(貿易ニュース鹿児島2005.4月号掲載)

その30

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その30

弓場秋信氏貿易はロット(取引数量)が大きいので在庫や販路を考えると二の足を踏む、との声を良く聞く。海上輸送はコンテナ貨物が主流になり、コンテナ1本当りでの運賃表示となる。しかしコンテナに満たない貨物(混載)の取引は出来ないのかと言うとそうでもない。そこで今回は混載について書いてみたい。

海上コンテナには、常温と温度管理可能(冷凍、低温)な2種類があり、長さでは20と40フィート、通常の高さより高いHQそして上部が開放できるオープントップがある。この中から貨物により使用するコンテナが選ばれる。混載貨物の場合は常温(ドライ)コンテナ以外の使用は難しいので、温度管理が必要な貨物は数量が少なくてもコンテナ1本使用する事となる。
混載貨物(CFSカーゴ)の海上運賃は容積(m3)で計算される。20フィートコンテナの内容積は27m3で、1m3当りの海上運賃がコンテナ1本当りの27分の1であればコストの事を考えずに自由に混載を使用できる。しかし通常は約11m3でコンテナ1本分の運賃支払いとなる。また混載の貨物を引き受ける輸出港、或いは輸入港が少ないので事前の確認が必要になる。神戸港は殆ど全ての国の貨物を受けるが地方港では少ない。それは混載と言えども、複数の荷主の貨物をコンテナに入れて運ばないと採算が合わないからである。ですから時にはコンテナが一杯になるまでその貨物が港で留め置きされる場合もある。以上の事に留意しながらトータルコストの計算をして混載を検討する。
混載の活用として考えられるのがまず輸出である。日本からの輸出は付加価値の高い商品が多いので経費を吸収できるケースが多い。また輸入者にとってもCFS貨物での輸入はリスクが少なくてすむ。前述のごとくコンテナ単位による貨物(CY)とCFSでは係る経費が異なるので見積もりは、CYとCFSを併記して顧客の選択肢を広げて上げる事が望ましい。また輸入に関してもコストは高くなるが、少量で品質・販路を調査する手段として有効である。
(貿易ニュース鹿児島2005.3月号掲載)

その29

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その29

弓場秋信氏最近目に触れる物で原料から最終製造工程まで純日本国産を探すことは困難になった。以前は消費者に原産国に対する拘りがあり、特に開発途上国製に対するチェックは厳しい物があった。しかし可処分所得が伸びないなか、消費者が価格重視の購買へと移行し原産国に対する見方も変化した。また地域が誇る特産品はその地にある原料を使って土地の人によって作られてきた。しかし最近ではその特産品でさえも怪しくなっている。この流れは止まりそうに無く貿易に携わる人や会社あるいはこの分野を志す人にとっては商機拡大のチャンスである。
先進国で生産性を上げ、これ以上のコストダウンは不可能と思われるぐらい努力して製造した商品の価格よりさらに約2割安い価格が世界には存在する。それが“チャイナプライス”と呼ばれる中国製である。競合先が“チャイナプライス”で見積りすれば戦う前に退場せざるを得ない。日本を含む世界で存在感を増している中国製品を扱わずしてニーズに応えることは難しい現状で、売れる商品を探す方法は如何に。中国商品を探す方法は色々あるが見本市の視察が入口としては最も効率的と思う。ご存知のように最大の見本市は年2回開催される「広州交易会」で、その次に有名な見本市は「華東交易会」である。そこで今回3月に開催される「華東交易会」について述べます。

華東交易会についての一般情報は「貿易ニュース」で紹介されるでしょうから省略しますが、広州と並ぶ産業の中心地華東地区には中国を代表する企業や日系を始めとする外資企業がひしめいている。それらの企業や地方政府がブースを設け、新商品や現在の売れ筋商品を陳列し熱気あふれる商談が入場者との間で交わされる。多くの出品業者の中でどの企業を購入先に選ぶか悩むところだが私なりの判断基準を紹介したい。注文したい商品が複数のブースで見つかり、陳列された見本の品質にも遜色ない時 ①日本への輸出実績は ②日本の商習慣を理解しているか ③商道徳に対する考え方 を質問してその答えを元に結論を出す。もし可能ならば現地で1社に絞らず帰国後数社にコンタクトしてレスポンス状況を見てからでも遅くないでしょう。また過度な値引き要求は慎んだほうが賢明でしょう。何故なら中国では売価に見合った品質の商品、即ち相当の原料・製造工程により製造されます。
(貿易ニュース鹿児島2005.2月号掲載)

その28

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その28

弓場秋信氏「冬ソナ」に代表される最近の「韓流ブーム」は、ソウルとの直行便が就航している鹿児島にも押し寄せ「日韓首脳会議」の指宿開催で最高潮に達している感がある。韓国と日本との関係は「近くて遠い国」と言われる時期が長かったが、最近は「近くて近い国」になってきたと実感させられる。この流れを経済に携わる人はどう捉えビジネスに生かすかを考えてみたい。

韓国と日本は地理的に近く歴史的にも深い関係から経済構造や生産物に類似点が多く、補完関係と言うより雁行型経済圏から競合関係に移行している。マクロ的に見ると物流面でのビジネスチャンスは「韓流ブーム」にあやかれそうにもない。また韓国経済の特徴として言われている財閥系大企業支配が、日本や台湾のようなサポートインダストリー群の成長を遅らせ、私共の取引相手先と成り得る中規模企業数が少ない。しかし最近では独立系中小企業が多数興り、限られた韓国内のマーケットだけでなく政府の後押しも得ながら積極的に海外に販路を求めるべく活動している。財閥系企業はロットが大きく敷居も高かったが新興企業群の成長は、私共にとってビジネスチャンス到来である。
何処の国でも一緒だが取引を始めるにあたりその国の国民性や商取引への考え方を理解する事が大切である。韓国との過去の取引経験から印象に残ることは、取引に対する一生懸命さ積極さである。韓国訪問の折に「焼物の里」を見学した。訪問先の工場は歴史的に薩摩焼とも関係が深く韓国屈指の工場であった。製品の中に亀壷を見つけたので鹿児島ではこの様な壷を使って黒酢を作る旨の話をすると、社長は鹿児島で使われている形状・サイズを質問した。それから数ヶ月が経過したある日電話があり「今あなたが言っていた黒酢用亀壷の見本を作って下関に着いた。これから鹿児島までタクシーで持って行く」との事。韓国訪問の際は単なる情報交換でしかなく購入の意志表示もしなかったにも拘らず、見本をタクシー運賃7万円をかけて持ってくるその積極性に脱帽した。その時は成約しなかったが暫くしてその企業とは取引を行っている。
韓国企業との取引で感じることは、前述の例に限らず積極性が有るので他国より楽である。質問事項に対する早い回答、品質に対する理解度の深さ、ビジネスにおける信用の大切さ理解、納期の厳守など価格の次に重要視するファクター全てを満足させてくれる国である。再検討されては如何でしょうか。
(貿易ニュース鹿児島2005.1月号掲載)

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