会員者情報
企業名 | 中越パルプ工業株式会社 川内工場 |
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所在地 | 薩摩川内市宮内町1-26 |
電話 | 0996-22-2211 |
名前 | 上席執行役員工場長 中野 達男 氏 |
インタビュー(貿易ニュース鹿児島2006,1月号掲載)
中越パルプ工業株式会社は、戦後間もない昭和22年に富山県で創立された。現在、東京に本社を置き、川内工場のほかに富山県に2工場を有する国内有数の製紙メーカーである。中野工場長と山根次長にお話を伺った。
川内工場は、昭和29年12月に川内市(現薩摩川内市)の誘致企業第1号として操業を開始した。市の熱心な誘致活動はもとより、川内川の豊かな水量や黒松などの原料に恵まれていたこと、良質な労働力を確保しやすかったことなどが立地の理由であった。創業当時112名でスタートした従業員は、現在約400名、関連会社を合わせると約1,000名で、薩摩川内市において、大きな雇用効果をもたらしている。
川内工場における紙の生産量は年間約30万㌧。創業当初は、包装用のクラフト紙が中心であったが、ニーズの変化に対応し、現在では、カタログやパンフレット用の塗工紙、書類や書籍用の上質紙,カップ原紙・壁紙・防虫紙といった特殊紙など様々な製品が製造されている。子供たちに人気のハリー・ポッターシリーズの翻訳本や愛子さまお気に入りの絵本「うずらちゃんのかくれんぼ」、トヨタのレクサスのパンフレットなどにも同工場の製品が使用され、国内で使用される建築用壁紙では5割のシェアーを占めている。また、量は少ないが、県内に豊富な竹を原料に利用した竹入紙も生産、紙コップや箸袋、封筒などに使用されているという。
紙の製造工程は、木材チップからパルプを作る「蒸解パルプ工程」、パルプを使って紙を作る「抄紙(しょうし)工程」の二つに大きく分けられる。まず、蒸解パルプ工程であるが、木材チップにはパルプになる繊維(セルロース)のほか、繊維の接着成分(リグニン)などが含まれているため、苛性ソーダなどを加えた釜の中で高温で煮沸し、リグニンを溶かして繊維を取り出す。この繊維を洗浄後、塩素、過酸化水素などを加えて漂白するとパルプが出来上がる。なお、この工程で発生するリグニンなどの有機物を含んだ廃液はボイラーで燃焼させることで、工場内の全ての熱源を供給するとともに、タービン発電にも利用され消費電力の95%をまかなっている。また、廃液に含まれる苛性ソーダなどの薬品は回収して再利用される。
次の抄紙工程では、はじめに、繊維が互いに接着しやすくするために繊維を叩いてヒゲを出す叩解(こうかい)という作業を行う。この段階のパルプの99%は水分であるが、プラスチック製の目の細かい網の上にパルプを薄く広げ、水分を落としながら紙の層を形成する。これをプレスして水分を絞り、熱を加えて乾燥させた後、巻き取って紙のロールが出来上がる。ロール1本の重量は20㌧と巨大なもので、これを注文に応じて裁断などを行い出荷する。川内工場では、一日当たりの生産量は880㌧、これをのばすと鹿児島-東京間の距離に相当するという。
国産が中心であった木材チップであるが、昭和40年代から外国産の輸入が増加し、現在中越パルプで使用しているチップの7~8割は輸入ものである。輸入相手先も北米、中国、東南アジア、南米、南アフリカ、オーストラリアなどと多様化しており、最近では、オーストラリアやニュージーランドのユーカリが最も多くなっている。自社の専用船6隻で年間40~50万㌧を川内港に輸入し、20㌧の大型ダンプで工場敷地内のチップヤードに搬送している。
かつて製紙工場は、悪臭や水質汚濁の問題などで公害産業と言われた時期があった。
川内工場では昭和50年に川内市と公害防止協定を締結、排水浄化施設をはじめとした様々な環境保全設備を整備してきており、平成12年にはISO14001を認証取得するなど環境対策に積極的に取り組んできた。中野工場長は「製紙工場は、資源のリサイクル、省エネルギー対策、国内外での植林事業などに積極的に取り組んでいる。今や地球環境に最も優しい産業のひとつですよ。」と語られた。
中越パルプ工業株式会社が掲げる「品質第一主義」、「環境対策の推進と地域社会への貢献」、「安全体制の確立」の三原則のもとに、川内工場においても、時代の要請に応える優れた品質の製品を安定供給すること、地域環境を守り共栄共存を図ることを目標に、事業活動を進めている。