当協会の金融専門の貿易アドバイザーが,今まで寄せられた金融関連相談事例の中から,是非知っておいていただきたい海外事業展開の為の基礎知識を紹介するコーナーです。
講師は福元 雅英アドバイザー(鹿児島銀行アジア貿易投資相談所 所長)です。
今回は7月28日(月)に講演いたしました「ミニ貿易実務セミナー」の中から,是非知っておいていただきたい海外事業展開の為の基礎知識をご紹介します。
「外国為替」とは「国際間の貸借を安全かつ円滑に決済するために現金を用いることなく、資金を移動させること」と解釈することができます。
「国際間の貸借の決済」とは「異なる通貨どうしの決済」であり、そのためには「異なる通貨どうしの交換比率」である外国為替相場が必要になります。
今回は、この「外国為替相場」の基本的な種類について説明します。
売り相場と買い相場
外国為替相場には、売り相場と買い相場がありますが、この呼び方は、銀行を主体とした呼び方です。したがって、「売り相場」とは「銀行が顧客に外貨を売る時の相場」であり、顧客から見れば「外貨を買う時の相場」になります。
(例) 輸入取引では、輸入者が代金支払いのための外貨を銀行から「買い」ますので、 銀行の「売り相場」を使います。
銀行間相場と顧客相場
銀行間相場とは、「銀行間で使われる相場で、実勢相場のこと」ですので、ニュース等で「現在の為替相場は、118円の10銭から15銭」という風に発表される相場のことです。
顧客相場とは、「銀行が顧客との外国為替取引に適用する相場」であり、毎日午前10時頃の銀行間相場(実勢相場)を基準として決められます。
つまり、顧客相場は、銀行間相場を卸売値とした場合の小売値になります。
(例)午前10時の実勢相場が、118.00円(基準相場)だとすると、基本的な顧 客相場は、売り相場で119.00円(基準相場+1円)、買い相場で117.00 円(基準相場-1円)という風に決められます。
直物相場と先物相場
直物相場とは「外国為替取引と同時に、または取引後2営業日以内に資金のやり取りが行われる取引(直物取引)に使用する相場」です。
先物相場とは「外国為替取引で、将来の一定時点または一定期間に資金のやり取りを行う取引(先物取引)に使用する相場」です。
(例)外貨の両替や外国送金等は、その取引と同時に資金のやり取りを行いますので、 直物相場を使います。これに対して、1ヶ月後に輸入代金を支払うような場合に、現 時点で1ヶ月後の相場を決めることができますが、この相場が先物相場です。
以上のように、基本的な外国為替相場の種類をいくつかの視点で分けることができます。
内容につきまして、お尋ねになりたい点がございましたら、鹿児島銀行アジア貿易投資相談所の福元(電話099-239-4896)へご照会ください。
(貿易ニュース鹿児島 2003.9月号掲載記事)
前回は、基本的な外国為替相場の種類について説明しました。
変動相場制のもとで、外国為替相場の変動は、貿易取引を始めとする外国為替取引の損益に影響を与えます。つまり、「為替リスク」が発生します。
この「為替リスク」を回避する最も有効な対策は、「外国為替取引を円貨建で行う」(例えば、貿易取引の使用通貨を円にする)ことですが、日本の貿易において「円」が使われる割合は、輸出で約35%、輸入で約25%と少ないのが現状です。言い換えますと、貿易取引においては、多くの場合で外貨(主に米ドル)が使われていることになりますので、為替リスク対策を検討せざるを得ません。
そこで、今回は「為替リスク対策」の中で、最も一般的な「先物為替相場の予約」について、お話したいと思います。
例えば、日本A社がアメリカB社から輸入を行い、1ヶ月後にその代金10万米ドルを支払うとします。A社が何も「為替リスク対策」を施さないと、1ヶ月後にその時点の為替相場を使って支払を行いますので、運良く現在より「円高」になれば予想以上の収益があがりますが、逆に「円安」になれば為替損失が発生し、相場変動の幅によっては、取引採算に大きな影響を与えることが十分考えられます。(このケースでは、1円の円安で10万円の損失が発生することになります。)
「先物為替相場の予約」とは、将来行われる外国為替取引に使用する相場を現時点で予約する(決めてしまう)ことです。これにより、将来使用する外国為替相場(先物相場)を確定することができます。先ほどのA社が「将来は現在より円安になるかもしれない」との予想があれば、現在の相場水準を基礎とした先物相場を予約し、将来円安になるリスクを避けることができます。
「先物為替相場の予約」は、「手数料が不要で、手続きが簡単」、「将来の取引時期が確定していなくても活用可能」というメリットがある反面、「一旦予約した場合は、必ずその予約を実行しなければならない(予約の取消はできない)」という注意点があります。この注意点は非常に重要で、「先物為替相場の予約を行った場合、将来の実勢相場が自社に不利に動いた時の為替差損は避けることはできるが、有利に動いた時の為替差益は得られない」ということです。要するに「為替リスク」の反対の「為替チャンス」は、放棄せざるを得ないことになりますので、この点の注意が必要です。
今回は、「先物為替相場の予約」について基本的な点を説明しました。
今回の内容につきまして、お尋ねになりたい点等がございましたら、鹿児島銀行アジア貿易投資相談所の福元(電話:099-239-4896)へ気軽にご照会ください。
(貿易ニュース鹿児島2003.10月号掲載記事)