当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!
その19
以前「中国プラスワン」のテーマで、何時でも中国にとって変われるを国を持つべきであると商品群毎に代替国を紹介した。それは近い将来中国商品が中国元(人民元)高により価格が上昇する可能性ありとの考えからであった。しかし近い将来でなく突然その日がやって来た。それも人民元高が原因でなく。
世界の工場として想像以上のスピードで発展している中国と世界の貿易は拡大を続け、それに伴い海上輸送は飛躍的に伸びた。中でも北米航路におけるコンテナ貨物の増大、そして鉄鉱石等の原料需要増からの輸送船の逼迫は海上運賃の高騰を招いている。一方中国製造業の興盛は素材原料の急激な輸入増をもたらし、世界の原料需給バランスを一気に崩した。それは鉄鉱石、綿花、天然ガスなどの国際相場を押し上げ、海上運賃の値上げと相俟って20-40%の価格上昇を招いている。鉄鉱石の価格高騰は、産業界の米と言われる鉄鋼材の原価を押し上げ、鉄を使用した様々な商品価格に影響し、綿花の相場の上昇は綿糸を素材とするあらゆる種類の綿製品に、そして天然ガスはプラスティツク製品価格に波及している。それらが今月(3月)に入り使用原料により差はあるが、中国側から10-40%の値上げ通告となった。
エネルギー、鉄鉱石等の原料輸入依存度の高まりへの不安や、高い経済成長率で台頭し始めたインフレ懸念から、人民元の「切り上げ」は中国経済にとってマイナス面だけではない、との議論が中国国内で起きている。また中国製品の輸出相手国からは人民元の為替相場に対しての不満が募っいて、中国政府高官の発言も従来の現固定相場維持から変動幅の拡大容認へと「切り上げ」への環境が整いつつある。従来の中国商品価格に現在の値上げラッシュそして人民元切り上げがプラスされた時、いまだデフレ経済から抜け出せない日本市場で中国商品の値上げ吸収が輸入業者や流通業者の犠牲なくして可能でしょうか。
今や輸入業者にとっては「中国プラスワン」は一刻を争う死活問題であり代替国との早期交渉が必要である。しかし中国に輸出を試みる業者にとっては、中国市場の購買力の変化も然る事ながら、インフレ、人民元切り上げは、中国と日本の価格差縮小に繋がるので、やっと巡って来た大きなビジネスチャンスである。
(貿易ニュース鹿児島2004.4月号掲載)