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その18

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その18

弓場秋信氏1昨年のBSEに続いての鳥インフルエンザの発生は貿易に多大な影響を及ぼしている。そこでこの様な突発的出来事、何の前触れも無く政府による突然の輸入禁止措置が取られる事態に対し、どの様に対処したら良いか考えてみたい。
日本国内での高病原性鳥インフルエンザウイルス発生では、発生元の鳥類は全て処分し周囲30km以内の鳥類、鶏卵の30日間移動禁止処置が取られた。その対象農家に対してはその間の経済的損出への補償が政府・自治体で検討されている。一方政府による輸入禁止措置発動で、鶏肉やその加工品の輸入が不可能になったり輸出国から貨物が積み出され日本に向かっている貨物或いは既に貨物が到着して通関待ちしている等の引掛り貨物への補償を輸入業者に対して政府が検討しているとは聞いていない。
当社では牛骨粉を含む複合肥料を中国から輸入していた。それはシラス土壌の鹿児島では、牛骨は必須肥料原料でその相当数量が中国、インド、パキスタンから輸入されていた。しかしBSE発生の原因が解明されていく中で牛骨の輸入が禁止された。幸いにも当社の牛骨粉を含む複合肥料の輸入は通関後の通達で被害は免れたが、時間と経費を掛け育てた商材は一瞬にして消えた。もちろんこれにめげず、燐酸源として牛骨以外の原料を探し顧客に提案してこそ頼られ必要とされる商社でありそこに新たな商機が生まれてくるのだが。
突然の輸入禁止措置に対処する手段として、輸入信用状(L/C)の条件に付記できないかを考えた。それはその商品が輸入国政府によって輸入禁止措置が発動された時、L/Cは取り消され効力を失う。即ち注文取消しによって発注貨物輸入による色々な損害を回避出来る。しかしながらL/Cには受益者(輸出業者)にとってそのような不利、不安定な条項(条件)は盛り込めない事になっている。またL/Cは通常取り消し不能で(もちろん輸入業者の判断で取り消し可能なL/Cもあるがそれでは輸出業者が納得しない)受益者の同意無くしてはL/Cの内容の変更は不可能である。であれば事前に輸入しようとする商材の考えられる諸々のリスクについての対応策を検討して、その最大リスクが会社にとって大き過ぎる場合は輸入を諦めるか、或いは国内仕入にすべきでは。またそのリスクが輸出者の協力で回避出来ると考えられる部分については輸出者と相談し理解を得た上でそれを契約書に謳う事が必要である。
(貿易ニュース鹿児島2004.3月号掲載)

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