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その17

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その17

弓場秋信氏最近新聞やテレビでFTA(自由貿易協定)が話題になる。そこでFTAは私たちの貿易にどの様な影響が有るのか考えてみたい。
貿易を営む業者にとっては、何らの制限や干渉も無く、あらゆる物を自由に外国と取引できることが理想である。しかし国・地域間では経済発展の歴史・産業構造などが異なり、同一の条件下で国際競争を行うには無理が有る。また日本国内にも産業間に同様な問題が存在し、貿易の完全自由化と言いつつも、輸入制限、関税賦課そして非関税障壁と呼ばれる保護政策が取られているのが現状である。それでは現在の日本の貿易政策でどんなデメリットがあり、FTA(二国間自由貿易協定)が締結されたならばどのようなメリットが考えられるであろうか。
最近の貿易相談で多いのはフイリピン、インドネシアなどASEAN諸国への中古車の輸出であり、輸入においては魚類を始めとする農水産物の日本への輸入である。ところが日本の中古車、或いは中古品の輸出は一部の国を除いて輸入が禁止されている。それは自国経済への影響を考慮しての措置である。しかしその国が全ての国からのそれらの輸入を禁止しているかと言えばそうでもない。例えばインドネシアはマレイシアからの輸入は認めている。また同一の商品でも日本からの輸入とマレイシアからの輸入では、日本からの輸入関税は高くマレイシアからは無税といったケースも有る。それはマレイシアとインドネシア政府間の貿易協定によるものである。
一方日本は農水産物の輸入では、輸入禁止の品目は無くなってきたが、高い関税率、数量枠の設定、輸入者の制限(許可制度)、品質検査(検疫)の独自設定などで一次産業保護の輸入制限を行なっている。最近メキシコとのFTA交渉で話題になった豚肉の関税は、通常は輸入価格の掛け率で計算されるが、豚肉はいくら輸入価格が安くても課税価格が決められ、安く輸入出来ない事で輸入数量が抑えられている。またIQ(輸入割当)商品は、政府の管理下で輸入者と数量が決められ、誰もが自由に好きな数量輸入出来ない様になっている。
FTAの締結は、日本の農水産物の輸入緩和を意味する。即ち関税の低率化、IQ商品の絞込み或いは撤廃。一方輸出においては相手国が日本の製品に課していた規制、関税などが改善され双方の貿易は拡大する。その時を新たなビジネスチャンスと捉え、日本政府と何処の国が交渉に入っているか、そしてどの様な内容が話し合われ合意されるかを注視しつつ、取引可能商品を調査研究することが肝要である。
(貿易ニュース鹿児島2004.2月号掲載)

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