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その13

当協会の理事で,弓場貿易株式会社社長の弓場秋信氏による,すぐに役立つワンポイント貿易アドバイス!

その13

弓場秋信氏このコーナー(その3)で輸入商品の品質に対するチェックポイントを書いたが、今回は実際の取引及び商談例について述べます。
15年前地元のホテル関係者から綿タオルの輸入依頼があった。そこで綿花の生産国でもありタオルを含む綿工業が盛んなパキスタンからタオルを輸入しようと、パキスタン製造業名鑑(ダイレクトリー)を基に4社ほどピックアップ、そして輸入したいタオルの仕様書、必要数量を書いて、商品見本、価格を送付して頂く内容の手紙を出した。すると4社より見本と一緒に返事が届き価格と品質をチェックすると、うち3社は仕様に合致した見本が届いた。しかし3社の価格には当然の事ながら高低が有る。私は現地に行くことは経費の関係で無理が有るので3社の中で価格が一番高い業者に発注する事とした。それは品質面を考慮してのことである。しかしながら到着した貨物は見本と比べ品質の落ちる市場価値の無いものであり、安易に価格が高ければ高品質な商品が届くであろう、との考えが甘かった。その3社ともう少し電話やfaxでコミニケーションを取り判断すべきであった。
中国の華東交易会に参加した時、上海の製造業者のブースで魅力ある商品が目に入った。そこで早速見積書を貰って価格をチェックすると、十分過ぎるほど価格競争力があるので展示品の品質チェックをすると、車輪を回したときに少し音がする。この音がしないように出来ないかと尋ねると「日本人は如何してそんな細かい事を言うのか、その音が本来の商品の性能を損なっていますか」。この商品は消費者に直接販売するので、性能に直接関係ない部分でも日本の顧客の目は厳しいと説明しても理解してもらえなかった。またミャンマーでの商談では、二級品が発生するので一級品と併せて買って欲しいと言われた。日本では二級品の商品価値はゼロであり買えないと返事をすると怪訝な顔をする「一級品より安くするのになぜ買えないのか、品質の落ちるものは価格を少し安くするので買って欲しい」と。
上記2社とは結局取引をしなかった。それは品質に対する考え方に疑問を憶えたからである。見本は1個であり最も品質の良い物を見せているかも知れない。製造工程や原料のチェックは当然の事、経営者を含む製造責任者が品質に対してどの様な考え方を持ち、物づくりに携わっているかを知ることが重要であり、その取り組みの姿勢が最終製品の品質を左右するからである。
(貿易ニュース鹿児島2003.10月号掲載)

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